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える。しかし、多量の情報が繰り返し出力されるため、その中から必要な新しい情報を選択する手間に対する苦言を聞くこともあり、情報の選択の容易化が求められている。

理想的な情報伝達の姿としては「あらゆる情報が自動的に受信、蓄積、更新される情報BOXが船内にあり、操船者は簡単なキー操作で必要とする情報をそのBOXから取り出せるようなもの」と言えるであろう。

そのような回線は、データが放送モードで伝送できる衛星回線であろうし、電子海図の更新情報等も当然含まれるであろう。

 

4) 位置通報の自動化

レーダーによる船舶の動静情報をサービスするとき、船名が特定できていればその効果は極めて大きなものとなり、また沿岸航行援助情報システムの当直者が航行安全上重大な特別情報を伝達しようとするとき、船名の特定がなされていなければほとんど情報の伝達は不可能である。

このようなことから位置通報は重要な要素であり、現在、海上交通センタでは位置通報ラインを設定し、管制対象船に位置通報を義務づけている。沿岸航行援助情報システムのように、特に法的に規制されない海域において、位置通報を義務付けることは困難であり、自主的な通報に期待せざるを得ない。

位置通報は、船務繁忙な船操者にとってかなりの負担を強いることになるため、現在、VHFトランスポンダを使用したシステムが検討されており、これらの自動識別システムの早期導入と普及が期待される。

 

5) 沿岸航行援助情報センターの利用促進

インターネットによる情報提供の現状を調査するため、ホームページにアクセスし多量の資料を収集した。国内の政府機関のホームページでは、行政案内的内容のものが多く、実用的な情報は少ないように感じた。企業のホームページは、最初の頃は会社案内パンフレット的なものが多かったが、最近は商品の売り込みや求人のための情報等、実用的に活用されはじめている。

本研究の目的に最も近いものは、米国コーストガード、ナビゲーションセンターのホームページであった。このページの情報量の豊かさと、月当りの利用件数3万件という数値に圧倒された。有用な情報に米国の通信料金の安さがあいまって、ナビゲーションセンターは利用者に完全に定着し活用されている。

本研究で構築した沿岸航行援助情報システムが、実用的に活用されるためには、有用な情報が充実していることは当然であるが、利用者が気軽にアクセスできるシステムでなければならない。

通信料金は利用者負担を原則としているので、普及促進を図るためにはアクセスポイントの増加による通信料の低廉化も必要であろうし、沿岸航行援助情報システムの利用者窓口(立直者)が、海上交通に関することは全て受け付け可能な体制とし、利用者に親しみの持てるセンターとすることが必要であろう。

 

 

 

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